「児玉清」を知る(すべては今日から 読了)

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ツヴァイクの短編集「チェスの話」を読んだ時に、この本が児玉清氏の選集だということを知った。個人的な児玉清氏の印象は俳優であることと、なにより「アタックチャンスの司会」であるというものが強かったので、独文科卒で院への進学を決めていたという事実を知って驚いたものだった。
「すべては今日から」はそんな児玉清氏が亡くなった後、既刊に入りきらなかった様々な媒体に寄稿した文章を集めて出版した本となる。なので、書評あり、人生論あり、エッセイありと様々な文章が章分けされて載せられている。

文章は少しクセがあるものの(一時期の寄稿の語尾に「だぜ」がついていたり)、それを除けば特に読みづらいわけでもなく文章力が感じられる。特に本に関する文章は熱量高く本を紹介していて読んでいて楽しい。
翻訳されている本を読み切ってしまって英語原文の本を読み始めるとは!私の英語力ではまだまだ難しいが、できたら絶対に楽しい。児玉清氏とは読んでいる本のジャンルがかぶっていないのだが(イアン・フレミングは007シリーズの作者ということは知っているが未読だし、トム・クランシーはUBIのゲーム名に冠されている作家だということしか知らなかった)、「ダ・ヴィンチコード」などの書評を読んでいると、彼がもっと生きていたら2010年代のどの本を、どういう風に紹介したのだろうと興味が湧くし、亡くなったことを残念に思う。
また、やはり人が読書にはまった経験や、どういう時期にどういう本を読んでいたのかの読書体験は読むのが楽しい。本棚に本が入りきらないという読書家定番の悩みも読めてニコニコしてしまう。
書評でも媒体によって文の攻勢が少し違うのだが、例えば「てんとう虫」への寄稿で三冊本を紹介している形式がブクログのブックリスト(本を三冊選んで紹介するもの)を彷彿とさせるし、自分の体験と書評を絡める手法はブログを書く時にも参考になりそうな書き方だと感じた。
児玉清氏の読書関連の著作は「ひたすら面白い小説が読みたくて」「寝ても覚めても本の虫」などがあるようで、こちらも読んでみたい。(が、この手の「本の紹介本」は立て続けに読むと「本を読んでいるのに本を読みたくなる」という謎の飢餓感に襲われるので、他の本を挟んでから戻ってこようと思う)


ところで最近、たまにYouTubeでBookshelf tourを見ているのだが、本を上に積み重ねる人をちょくちょく見かける。取り出しづらいのではないかと考えていたら、冒頭の洋書の話を読んで少し納得した。横書き本のタイトルが見えやすいように、なのだろう。

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読書
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