英国王室的婉曲表現(エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人 読了)

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昨年、プラチナジュビリーを迎え、そして亡くなった英国君主エリザベス2世。関連書籍が読みたくなって昨年下半期からいくつか読んだもののひとつがこれ。(他に読んだものは君塚直隆著「エリザベス女王-史上最長・最強のイギリス君主 」「女王陛下のブルーリボン―ガーター勲章とイギリス外交」)この本は年をまたいでしまったが、無事読み切れた。


ウィンザー城でロシア人青年が亡くなったという事件を女王は気にかけ、アフリカ系イギリス人の新人秘書官補であるロージーがそれを探ることになる。
君主であるエリザベス女王が名探偵となる時、表立っては動けないのはもちろん、発言のひとつひとつにも慎重にならなければならない。事件のことを表立って調べているととられないように、時に全く関係ないお茶会を遠回しに主催させたり、一見関係なさそうな用事を頼んで相手に事件関連の出来事を「自発的に」思い出させるようにしたり、相手のプライドをへし折らないようにまるで初めて見聞きすることのように報告を受けたりする。京都人もびっくりの婉曲表現の連発である。周囲がもう高齢で頭の鈍い女性と思っていようがそれを甘んじて受け入れ、最後まで種明かしをせずに穏便に事件を解決まで導いてやる。

それを郵便制度創設五百周年を祝うイベント、女王の誕生日、ガーデン・パーティー、ロイヤル・ウィンザー・ホース・ショー…公式行事とその準備で目白押しの中やってのけるのである。

女王の捜査を手伝うロージーやマクラクランを始めとした面々も、全ての事情は明かされずに女王に頼まれごとをされたりする。趣旨が呑み込めなくても頼まれたことを実行したり、逆に意図を汲んでそれ以上の働きをしたりと、女王に仕える忠実な臣下として、彼ら彼女らは動いていく。

文章の視点はロージーやエリザベス女王をはじめ、結構頻繁に入れ替わるのだが、終盤のMI5長官であるハンフリーズの視点は滑稽だなと思いつつ読んでいたら、巻末の解説にも同じようなことが書いてあって笑ってしまった。

数ヶ月前に紀伊國屋で見かけたA Three Dog Problem: The Queen investigates a murder at Buckingham Palaceはこのシリーズの続編のようだ。しかし今作の雰囲気だと英語原文で読める気はしない。実在の人物や番組などがバンバン飛び交うので、訳注にかなり助けられた。次作も日本語訳が出るのを待ちたいと思う。
そして今作を読む限り、なかなか面白かったのでこれからも続いて欲しいと思っているが、当の陛下が亡くなってしまったのでなかなか難しいか。

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読書
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