その結びつけは正しいか(発見!不思議の国のアリス 鉄とガラスのヴィクトリア時代 読了)

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「不思議の国のアリス」が書かれたヴィクトリア朝時代の文化を、「不思議の国のアリス」に絡めて紹介する本。

発見! 不思議の国のアリス: 鉄とガラスのヴィクトリア時代

時代が進むとその時代では当たり前だったものも珍しくなり、理解できなくなる。逆に、珍しかったものが身近になることも。まして土地が遠く離れていれば文化の違いは尚更だ。というわけでほとんど何も知らないヴィクトリア朝の文化が紹介されていて興味深かった。
他方で取り上げている項目とアリスを結びつけるには少々無理がないかという部分があるような。そう感じるのはこのAmazonレビューを見たからだろうか。

電気機関車に関しては全く知識がないので何とも言えない。この手の話題に詳しい鉄オタの知り合いがいたらなあ。
今後調べたい項目としてメモしておこう。

地下鉄の開業とアリスが地下へと落ちることを結びつけるのは少し無理がないか、とは私も思う。
そも、夢とは起承転結もなしに場面がコロコロと移り変わるものである。言わば夢オチであるアリスの物語において、その場限りのキャラクターが大量に出てくるのは「夢の世界」というものをよく体現していると思っているので、「アリスが地下鉄を下車して登場人物とおしゃべりし、また次の駅に移動している」というのは…「鏡の国のアリス」の方ならまだ適用できそうだが…しかしあれはチェスの発想であろう。うーむ。

もう一つ。個人的に「果たしてそう読めるだろうか」と感じたのは犬の部分。子犬と小さいアリスの関係を

見栄を張り、身の丈に合わない犬を飼おうとする人が増えたことへの風刺

と書いているのだが……。ドジソンはアリス・リデルに贈る本、そして子供向けとして書いた本にそんな批判を込めるだろうか。不条理さはあると思うが……。そして、私はルイス・キャロルの他の著作を読んだわけでもないので何とも言えないのだが。
読んだばかりの「失踪者たちの画家」で、自分の意図とは全く異なる、作者の来歴すらも違う風に自分の絵の解説をされているシーンが頭をよぎる。また、大学時代に「まあ本当はあんまり関係ないと思うけど」と思いつつ、物事を結びつけた自分の文学のレポートも。いや、考え過ぎというか、ただの連想ゲームなのだが。

とはいえヴィクトリア朝時代を覗き見る入門書としては読みやすくてよいと思う。

「不思議の国のアリス」の5つの日本語訳を「この箇所はどのように訳しているか」と比較している4ページも面白かった。言葉遊びの多い作品なので、日本語訳の比較は他の個所でもやってみると楽しそうだ。

その他

後で調べたいなと思ったり覚えておきたいなと思った細かいところ。

プロフェッション

そういえば日本語ではプロフェッショナルとは言うが、専門的な職業のことをプロフェッションとそのままカタカナにすることは少ないような気がする。

Lawn tennis

lawnは芝生のことらしい。最近読んだ他の本にも出てきたので覚えておこうと思う。

昔は小さなネズミをティーポットで飼うという習慣があった

らしい。この辺りはもうちょっとちゃんと調べたい。

ガラス税(1845年廃止)と窓税(1851年廃止)

かなりユニークな課税だなと思ったり。
Wikipediaの「Window tax」の項目を見てみると、See alsoの部分に
Bedroom tax
Brick tax
Glass tax
Hearth tax
Wallpaper tax
とずらずら並んでいて凄いな。「Bedroom tax」は近年の話らしい。

イギリスの住まいを変えた「窓税」と江戸時代の「開口税」 | スタッフブログ | 岡山・倉敷で新築一戸建て・注文住宅なら工務店【運船建設】
先日、面白い記事を見つけたので紹介します。 昔のヨーロッパには窓に税金をかける「窓税」というものがありまし

最後に、上記のAmazonレビュアーが他にレビューしている本を眺めていたら、「Lewis Carroll in His Own Account: The Complete Bank Account of the Rev. C. L. Dodgson」という本をレビューしていた。レビューによると銀行の収支データを掲載したものらしい。ルイス・キャロルにまつわる本にはこんなマニアック(失礼)なものも出ているのか……と感心した。

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