偏屈探偵による密室殺人事件 の謎解き(衣裳戸棚の女 読了)

原題:The Woman in the Wardrobe
1951年発表作品。本文は253ページ。

この前読んだ「ベヴァリー・クラブ」がなかなか面白かったので、前作であるこの本も借りた次第。「ベヴァリー・クラブ」は原書房から出版されているが、今作は創元推理文庫から、1996年に出版されている。

ホテルを壁伝いに降りてきたりする男二人、密室で死んでいる男、その部屋の衣装戸棚に閉じ込められた女、と奇っ怪な状況から幕を開ける探偵ヴェリティの推理小説。朝イチでホテルをバルコニー伝いに渡ろうとする男を見るとは、探偵でなければ楽しめない状況だろう。

衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)


主要な登場人物一人一人に、一ページ丸々の挿絵があるのがわかりやすくていい。こういう小説には初めて出会ったかも。ライトノベルでも「人物別に一ページ分の挿絵」は見たことがない(が、そもそもライトノベルをほとんど読まないので知らないだけかもしれない)。

 

以下少しネタバレあり。(結末に関する感想あり、トリックは記載していない)

内容の感想としては、序盤に「えっ…?」と思った出来事が殺害の重要なキーになっていて苦笑してしまった。だよねえ、という感じ。
このオチにも関わらず感じるあっけらかんさは、探偵や被害者の性格ゆえか。
「トリック」という点では「ベヴァリー・クラブ」の方が好きかもしれない。他方で「ベヴァリー・クラブ」ではクロスワードの回答を聞きに電話してくるだけだったランブラー警部が現場に来ており実質相棒ポジションだったり、受け答えに過不足ないジャクソン警部(翻訳の口調のためか爽やかな男に感じる)、一癖あるドクター・ペラムなど、登場キャラクターの安定感はこちらの方が上かと思う。
読みやすさという意味でもそうだ。なにせ探偵ヴェリティ、こちらでも偏屈じいさんな面は発揮されているが、「ベヴァリー・クラブ」では舞台となる村の食事がまずいせいか終始キレ散らかしている印象だ。今回食したホテルのシュリンプは美味しかったようで、「ベヴァリー・クラブ」ほどではない。まあ今回も、イギリス国教会嫌いとのことで証言をしにきた牧師に延々喧嘩をふっかけてはいるのだが。

気になった単語

頻出する「フランス窓」がどういうものか理解できなかったのだが、これはGoogleで検索すると一発で用語解説や画像が出てくるので助かった。テラスなどに面している天井から床までの高さのある窓のことで、人の出入りができるものだそう。

「そぞろ歩き」はそろそろ死語になってきているのかもしれない。単語の響きがなぜか好きだ。意味は「あてもなくぶらぶら歩くこと」である。原文だとなんて書いてあるのだろう。google翻訳ではこの単語を「Walking around」と出力している。

もう一つ気になったのが池を泳いでいる「シルヴァー・フィッシュ」なる魚。同じくGoogleで「silver fish」と検索すると「セイヨウシミ」という本とかふけとか埃とかを食べる虫が出てくるのだが、まさかこれではあるまい。池を泳がないし、「きれい」と評されるものでもない。これはただ単に銀色の魚なのだろうか……?

 

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