メモ寄り

Just a Memo

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天使のいる廃墟

      2022/06/16

原題 paraíso de alto
スペインの作家フリオ・ホセ・オルドバスの小説である。本文142ページ。

図書館で「それほど長くない小説」を読みたくて借りた。直前に借りた「カムイユカラと昔話」を期間内に読みきれなかったことが私を完全に打ちのめしていた。

死にたいと思う人がやってくる村、パライソ・アルト。そこには同じく死のうと思ったけれど死なずに住み着いた主人公しかおらず、主人公はやってきた人と話をし、おそらくその死の後始末をしたりしている。淡々と読みやすい文で進んでいくパライソ・アルトの日常とも言えるオムニバス小説。

最初に訪れた銀行家風の人の話が一番物悲しかったかも。他の人たちは死の五歩手前くらいで描写が終わるが、銀行家風の人の話は死の一歩手前くらいまで描写されているような気がする。「お前ともこれでお別れだな。一緒にずいぶん楽しい思いをしてきたね」と車に別れを告げる一文は人生最後に何かに別れを告げる物悲しさがある(その直前の文章にある豚の話も別の意味で悲しいが)。
人は最後には何もかも置いていかなければならない。昨年、老人ホームに入るから、と最後の挨拶に来てくれた隣人のおばあさんを思い出した。長年住んだ家と、あの綺麗に手入れされた花々を置いていくのだ。正直に言えば同居している祖母よりもはきはきしていて元気そうだったのに。今どうしているだろうか。近場の老人ホームなのだが、会いに行くという間柄でもないのでわからない(そもそもこのご時世会いづらいというのもある)。

話が逸れた。
パライソ・アルトにやってくる人たちは皆ユニークだ。それぞれの人生に触れるのが楽しい。たまに主人公の知り合いもやって来て、その知り合いと主人公自身の人生も垣間見える。死ぬことに主点が置かれるのではなく、その人のそれまでの人生に主点が置かれているようで、全体的にふんわりとした走馬灯のような小説である。また、パライソ・アルトという主人公以外誰も定住していない廃村を覗き見る、ミニチュアの世界を見ているような感覚が個人的にあって、そこがお気に入り。

ただ、原文で読むかと言うと悩む。まだ小説を読み切れるほどには自分の読解力は無いように感じる。

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